●Windowsのサポート期限はどれだけ告知されているか Windows 98/Meのサポート期限終了にともない、これまではあまり考慮されてこなかったWindowsの「サポートライフサイクル」が注目されるようになった。しかし、実際に期限が切れる98/Meにばかり注目が集まり、それ以外のWindowsのサポート期限はあまり意識されていない。 しかし、現在発表されているWindows XPのサポートライフサイクルは、Windows XP Home EditionがXPの次期OS発売の2年後、Windows XP ProfessionalがXPの次期OS発売の7年後。予定通り、Windows Vistaが2007年1月に発売になると、XP Home Editionは2009年1月にはサポート期限が切れることになる。このサポート期限をあらためて聞くと、「案外、残り期間は短い」と感じる人は多いのではないか。そして、この事実はどれだけきちんと告知されているのだろうか。 ●PCメーカー直販サイトでも説明はなし
前回、当コラムにおいて、Windows 98/Meのサポートが切れることについて、マイクロソフトに取材したものをまとめた。Windows 98/Meについては、常時ブロードバンド接続環境を意識しない時代に開発されただけに、「どれだけセキュリティパッチを当てても、攻撃を防ぐのが困難な状態にある。ハードウェア的にも、CPUがPentium IIでは、今後悪さをしそうな動きをしているファイルを見分ける『ふるまい検知』といったことを実現できない。セキュリティの面から見て、サイバー攻撃からPCを防御するのが限界に近づいている」(マイクロソフト セキュリティレスポンスチーム セキュリティ レスポンス マネージャの奥天陽司氏)という説明がなされた。その点は十分納得できる。 だが、現在利用しているWindows XP Home Editionのサポート期限がVista発売後2年間しかないという点については納得できない。 そもそも、XPが搭載されているPCを購入した際にサポート期限の違いを意識した人はどれくらいいるのだろうか。Home EditionとProfessionalの機能的な違いは認識していても、サポート期限が違うことを意識している人はほとんどいないのではないか。 マイクロソフトでもサポートライフサイクルに関する告知がまだまだ少ないことは認識している。量販店向けには店員にサポートライフサイクルを認識してもらうためのパンフレットを作成中だという。 それでは、パンフレットの作成に比べ、短時間に情報を伝達できるはずのWebサイトではどうなのか。 PCメーカーの直販サイトでWindows XPのサポートライフサイクルに関する説明や、マイクロソフトのホームページ内にあるサポートライフサイクルの説明ページへのリンクが貼ってあるのかどうかを確認してみた。 NEC、富士通、日本ヒューレット・パッカード、エプソンダイレクト、デル、レノボ・ジャパンに確認したものの、サポートライフサイクルに関する記載をしているメーカーは1社もなかった。 NECや富士通といったメーカーは、コンシューマユーザー向け直販サイトと企業ユーザー向け直販サイトの両方を持っているが、どちらのサイトにおいてもサポートライフサイクルに関する説明は行なっていないそうだ。 各社ともに、「Windows 98/Meのサポート期限切れが問題となったこともあり、XPについても説明が必要な時期に入ってきていると認識しているが、具体的な対策はマイクロソフトと協議して、今後行なっていく予定」ということであった。 現段階では、マイクロソフト側からも、サポートライフサイクルに関して説明をして欲しいといった要望もないという。 ●企業ユーザーは機能面からProfessionalを選択している サポートライフサイクルは、企業ユーザーを優遇している。短期間に買い換えが難しいことへの配慮だろうが、誤ってHome Editionを使っている企業ユーザーというのはいないのだろうか。 さまざまな規模の企業ユーザー向けにシステム販売を行なう大塚商会に問い合わせてみたところ、「ネットワークを組んでいる企業ユーザーであれば、Home Editionを利用しているユーザーはまずいないとみてよい」という答えが返ってきた。 確かに、機能的な特徴がコンピュータドメインのアカウントサポートなど、ネットワーク環境を整えた企業向けのものになっている点から、企業ユーザーの多くがProfessionalを選択していると見て間違いない。 ただし、メーカーの企業向け直販サイトでもHome Editionを選択することも可能で、さらには試しに店頭で販売されているPCを購入している企業もゼロではない。 特に企業規模が小さいSOHOユーザーの中には、Home Editionを購入しているユーザーも存在していると考えられる。
SOHOユーザーを顧客に持つ業務ソフトメーカーの弥生では、2006年5月、自社製品のユーザー向けに「Windows 98およびWindows Meをお使いのお客さまへ」という書類を送付した。この書類には、2006年7月11日でマイクロソフトのWindows 98/Meのサポート期間が終了することから、弥生の次期製品においては2つのOSを動作対象としないことを記載。さらに、Windows 2000が2010年7月13日で、Windows XP Home Editionが次期Windows発売の2年、Professionalが次期OSの発売後7年でサポート期間が終わることも付記した。 PCには比較的不慣れなユーザーも多いだけに、「サポート期限といったことは認識していないユーザーも多いのではないか」と弥生側では分析する。それを見越して、Windows 2000/XPについても告知を行なった。 今後、XPを利用しているユーザーに対してどう対応していくのかについては、「当社のユーザーの利用しているOSを調査すると、決してHome Editionがマジョリティというわけではない。だが、Home Editionを利用しているユーザーがいることも確かであり、今後こういったユーザーをどうフォローしていくのかマイクロソフトと協議中」だと弥生のプロダクトマーケティング担当の竹之内学執行役員は説明する。 ●サポート期限を延長してきた過去が「今回も……」と思わせる 今回、取材を進めてみて、Windows XP Home Editionのサポート期限が、Windows Vista発売後、2年で終了することに対して、危機感を持っている人が案外、少ないように感じた。その背景として、「マイクロソフトのサポート期限は、当初予定よりも延長されてきた。おそらく、XP Home Editionについても同様の対応がなされるのではないか」という認識を多くの人が持っていることが挙げられる。 確かにこれまでのケースではサポート期限は当初予定よりも延長されてきた。ただ、「その慣習があるから、現段階ではそれほど告知しなくても大丈夫」と考えてしまうことは危険である。マイクロソフトおよびPCメーカー、対応ソフトを開発しているメーカーなどが現段階から積極的にサポートライフサイクルについて告知していく必要があるのではないか。 特にマイクロソフトでは、もっと積極的に告知活動を行なう必要がある。例えば、同社のホームページのトップページを見ても、7月11日にサポート期限が切れたWindows 98/Meに関する記載はない。サポートライフサイクルについて説明したページに行かなければ情報を見ることができないというのは、いかにも不親切な感がある。 また、店頭でWindowsがバンドルされたPCを購入するユーザーに対しては、サポート期限の告知をすると共に、通常のパッケージよりも安価でHome EditionからProfessionalへアップグレードできるパッケージを用意するといったフォローがあれば、ユーザーの認識は大きく変わってくるのではないか。同じ製品でHome Edition/Professionalの両方をインストールした製品を用意するのが理想的だが、それは現実的には難しい。PCを購入するユーザー専用の特別パッケージを用意し、ユーザー側に購入の際に、Home Edition/Professionalのどちらかを選択ができるようにすれば、ユーザーの意識も大きく変わるだろう。 Windows 98/Meのサポート期限が終了する直後、マイクロソフトの姿勢を非難する報道を数多く見かけた。その原因となったのがマイクロソフト側の告知活動の不十分さと、サポート期限が切れるユーザーをフォローする体制がなかったからのように感じた。おそらく、セキュリティ面での不安をきちんと説明すれば、Windows 98/Meのサポート期限が切れることは多くの人が納得したはずである。実際にマイクロソフトのサポート窓口に問い合わせがあった際には、「説明をすると、ほとんどのユーザーが納得してくれる」ということであった。 Windows XPのサポート期限が切れるまでに、どれだけ告知やユーザーフォローができるのか。マイクロソフトの努力が期待される。 □マイクロソフトのホームページ (2006年7月27日) [Reported by 三浦優子]
【PC Watchホームページ】
|
|